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検証「諫早湾干拓事業」
有明海漁民・市民ネットワーク(ブログ)



漁民ネットが一日も早い開門を求める緊急声明

 有明海漁民・市民ネットワーク(漁民ネット)は与党検討員会が赤松農水大臣に開門を適当とする報告を行ったことを受け、2010年4月30日、諫早湾の一日も早い開門を求める緊急声明を発表しました。


2010年4月30日

【緊急声明】
   有明海・諫早湾沿岸の農業・漁業・防災のために
         赤松大臣に一日も早い「開門」実施を求めます。

有明海漁民・市民ネットワーク代表 松藤文豪

 諫早湾干拓事業に関する「開門」について、今般、政府・与党の検討委員会が、中長期にわたって「開門」することが適当との結論を示しました。一方で、具体的な「開門」の時期が示されず、「環境影響調査を行った上で、万全の事前対策による地元関係者の理解を得ること」が「前提」とされ、「開門」に関する判断は、赤松農林水産大臣に委ねられました。

 私たちは、下記に具体的に述べるとおり、一日も早い「開門」がどうしても必要であり、「開門」は、有明海・諫早湾沿岸の漁業はもちろん、諫早湾周辺の農業や、低平地の防災にとっても、大きなプラスの効果を果たすものだと確信しています。
 この間、長崎県知事などが開門反対を主張する理由には、明らかな事実誤認や、いたずらに「開門」による悪影響を誇張する傾向が見られますが、このような誤った主張は、冷静かつ科学的な判断のもとに、峻別されなければなりません。

 私たちは、「開門」に関する環境影響評価をするとしても、2002年に実施した短期開門調査と同等の「開門」をすすめながら、平行して実施することが可能だということを、これまでも具体的に提案してきました。
 私たちは、赤松大臣に対し、環境影響評価などを理由に「開門」を来年に先送りするのではなく、一日も早い「開門」の実施を決断するよう、あらためて強く求めるものです。

  1. 調整池の水質は、農水省が自ら定めた目標値を大幅に超えたままで、毎年多額の水質改善対策費が投じられているにもかかわらず、一向に効果があがっていません。しかも、ここ数年、有毒なアオコの増殖が確認されており、調整池の水を農業用水として使用することの危険性が、研究者から指摘されています。さらに、調整池の外の諫早湾のカキなどにも、アオコの毒素が含まれていることが分かっています。

    この問題を放置することは許されません。対策としては、調整池内部でのアオコの増殖をおさえることが、最も有効ですが、「開門」こそが、そのためにも即効性があり効果的な対策であることは明らかです。

  2. 潮受堤防の閉め切りによる潮流の減少と、調整池からの排水が、諫早湾・有明海の赤潮・貧酸素の原因であり、「開門」しないまま夏を迎えれば、今年も赤潮・貧酸素による魚介類の大量死が発生する恐れがあります。

    諫早湾干拓による有明海の漁業被害は、潮受堤防建設が本格化した1990年頃から始まっていました。1997年の潮受堤防閉め切りで、有明海の子宮とよばれていた諫早湾奥部の広大な干潟・浅海域が失われるとともに、有明海奥部の潮流・潮汐が弱められました。これらの要因が重層的に有明海の生態系にダメージを与え、漁業の基盤を脅かしてきました。

    2000年12月には、赤潮の大発生により、養殖ノリが壊滅的な色落ち被害を受け、諫早湾干拓による深刻な漁業被害が、あらためて社会的に注目されました。その後、ノリ養殖については漁業者の必死の努力により、ある程度の生産は維持していますが、2000年ほどの規模ではないにせよ、色落ち被害は頻繁に発生しており、漁業者は常に大きな不安を感じながら、必死の思いで漁業を続けています。

    漁船漁業、採貝漁業については、ノリ養殖に比べて、報道などで漁業被害の深刻さが伝えられておらず、そのこと自体が大きな問題ですが、潮受堤防の工事着工以降、年を追うごとに不振の度を深めており、「宝の海」と呼ばれた有明海の漁業が、まさに存亡の危機に追い込まれていると言っても過言ではありません。

     その中で、今年、佐賀沖ではタイラギ漁が復活し、大浦などの漁港は、久しぶりの活気に包まれています。しかし、ようやく復活したタイラギも、夏場の貧酸素で死滅してしまうのではないかという不安を多くの漁業者が抱いています。

    「開門」をすれば、調整池の水質は確実に改善し、潮流・潮汐の回復にも寄与することから、「開門」の実施は、一日でも早く、というのが漁業者の切実な願いです。「開門」すれば避けられ、「開門」しなければ確実に発生する、赤潮・貧酸素による漁業被害を、今年も繰り返すことは許されません。「開門」を来年に先送りすることは、私たち漁業者にとっては、まさに死活問題なのです。
  3. 調整池の水質悪化のため、小潮時に排水すれば漁業被害が発生し、排水しなければ、周辺低平地の湛水被害につながることが、2009年夏の森山地区の湛水で実証されました。「開門」により、調整池の水質を改善すれば、この様な問題はおこらず、早期の「開門」は、周辺低平地の排水対策にも寄与します。
  4. 今年秋には、名古屋で、生物多様性条約の締約国会議が行われます。「開門」は、国際的にも重要な、有明海の干潟・浅海域の生物多様性を回復させる国家的な取り組みであり、国際社会からも大きな注目を集めることは違いありません。CBD-COP10の議長国として、「開門」により、有明海の再生が、着々と進んでいる状況を世界にアピールすべきです。

以 上