TOP PAGE | INFORMATION | REPORT | LIBRARY | LINK

中・長期開門調査見送りの決定に対する
有明訴訟弁護団の声明


 2004年5月11日の会見で、亀井農水大臣が有明海の中・長期開門調査見送りを正式に表明したことに対し、よみがえれ!有明訴訟弁護団は同日、以下の声明を発表しました。


声 明

中長期開門調査に関する亀井農水大臣の発表について

2004年5月11日
よみがえれ!有明海訴訟弁護団

 本日,閣議後の記者会見で,亀井農水大臣は,諫早湾干拓事業と有明海のノリ不作等の被害との関連が想定されることから,これを検証するため,中・長期にわたる同干拓事業の潮受堤防の開門調査を実施すべきとの有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会(以下,「ノリ第3者委員会」という)の提言を無視し,同開門調査の実施を見送る旨の発表をした。
 今回の農水省の対応は言語道断であり,強い憤りを覚えざるをえない。
 第1に,代替策として,環境変化の仕組みの解明や環境改善などの措置とるというが,そもそも有明海異変の原因解明のために中長期開門調査が提言されていたのであり,開門調査なしでの環境変化の仕組みの解明はありえない。また,科学的な環境変化の仕組みが解明できないままでの場当たり的な環境改善では,到底,宝の海といわれたかつての有明海の復元は不可能である。
 第2に,諫早湾干拓事業着工以来,諫早湾内においては早くからタイラギをはじめとした深刻な漁業被害が発生し,ギロチンと称された潮受堤防締め切り後は,2000年の大規模なノリ不作など,被害は有明海全域に拡大し,いまや有明海漁業とこれを基盤とした地域経済は極めて深刻な状況にある。中・長期開門調査は,漁民にとって生き残りをかけた最後の望みであり,今回の決定は,一省庁の面子のために多くの漁民の希望と生活を奪い去ることに他ならない。
 第3に,そもそも中・長期開門調査は,2000年の歴史的なノリ大不作を契機とした世論の高揚のなかで,ノリ不作をはじめ有明海漁業の壊滅的な被害の原因を究明し,その対策を提言する目的で,農水省みずからが設置したノリ第3者委員会の結論である。ノリ第3者委員会は,有明海の深刻な漁業被害をもたらせた有明海異変の原因は諫早湾干拓事業であると想定し,その検証のためにこうした開門調査を提言した。本来なら,設置の目的と経緯に照らし,農水省は直ちにこれを実施しなければならない性質のものである。これを実施すれば,干拓事業と漁業被害の因果関係はより明確にならざるをえないことは,多くの心ある研究者が支持している。この期におよんでの今回の決定は,隠蔽工作と受け止められてもしかたのないものである。
 第4に,諫早湾干拓事業と有明海における深刻な漁業被害の関係については,佐賀地方裁判所において近々仮処分決定が出されることとなっており,また,公害等調整委員会に係属している原因裁定手続きにおいても,研究者の尋問が始まり,本格的な審理が開始され,遅くない時期に判断が下されることとなっている。この時期に農水省が関連性なしとして独善的に中・長期開門調査を実施しないとの決定を下すことは,こうした司法の判断をも無視するとの姿勢をあらわにしたものでる。
 第5に,中・長期開門調査は,熊本・福岡・佐賀の各県議会が全会一致による決議でその実施を求めたのをはじめ,沿岸各市町村自治体でも次々に同趣旨の決議があがり,有明海を漁場とする各県漁連もその実施を求めて再三にわたって要請を行ってきたところである。昨日も,福岡,熊本,佐賀の3県の県議会と漁連の代表者が上京し,同開門調査の実施を訴えたばかりである。本日の亀井農水大臣の発表は,地方と現場を無視したものであり,極めて遺憾といわざるをえない。
 以上のとおり,農水省は,今回の発表を撤回し,直ちに中・長期開門調査を実施すべきである。

TOP PAGE | INFORMATION | REPORT | LIBRARY| LINK