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仮処分決定を受けて漁民ネットが声明を発表

8月26日の農水省前集会で挨拶する、有明海漁民・市民ネットワークの前田力さん。
 「よみがえれ!有明海訴訟」の仮処分申請で、佐賀地裁が諫早湾干拓工事の中止を命令する決定を下したことを受け、有明海漁民・市民ネットワークでは2004年8月27日に、以下の声明を発表しました。



農水省は仮処分決定を真摯に受け止め、直ちに水門を開放せよ!

2004.08.27
                     有明海漁民・市民ネットワーク

 昨日、佐賀地裁は、我々漁民側の主張を全面的に認め、諫早湾干拓事業の工事差し止めを命じる仮処分を決定した。この決定は、毎年深刻な漁業被害がうち続く中で生活が困窮の極限に達していた漁業者仲間に、再度生きる勇気を与えるものとして高く評価するものである。
決定は、「有明海で実際にノリ養殖業、貝採取業、漁船漁業等に従事する漁民の多く(たとえば漁民アンケート調査結果によると回答者の9割近く)が、自らの日々の操業に伴う実体験として、潮の流れが弱まった、本件事業と漁業被害との間には関連性があると実感していること」等も例示しつつ、漁業被害と事業との一定の因果関係を認めている。農水省はこの間、我々の切実な思いに一切耳を傾けようとしなかったが、我々の声はようやく裁判所に届いたのだ。
そのうえで決定は「損害を避けるためには、既に完成した部分も含めて事業全体を再検討し、必要に応じた修正を施すことが肝要」と述べ、有明海再生のために事業を根本から見直すことを求めている。そして、農水省が自ら設置したノリ第三者委員会の提言さえも無視して、中長期開門調査を見送り遮二無二事業を進めてきたその姿勢を厳しく断罪した。

 然るに政府・農水省は、これまでの姿勢を謙虚に反省することもなく、昨日の決定直後から異議申し立てを示唆し始めている。問題の解決にさらに時間をかけ、有明海と漁民をさらに追い詰めてさえも省益を守りたいと言うのだろうか。いま農水省に求められているのは、一刻も早く事業推進から有明海の再生へと政策を大転換することではないのか。

 昨日の決定でとりあえず工事は止まったものの、潮受け堤防の存在で海洋構造が激変してしまった以上、このままで有明海の生態系や漁業が復活するわけはない。現にこの夏も諫早湾で発生した有害赤潮シャットネラによって、頼みの綱であった養殖アサリが全滅した。もちろんタイラギも全滅したままであり、魚もかつての三分の一しかとれない。そして今年もまた、不安のうちにノリ養殖の季節が近づいている。
一昨年の短期開門調査によって、開門さえすれば有明海奥部の海水の停滞傾向は幾分なりとも改善されることが判明している。その年だけはごくわずかとは言えタイラギも着堤・生育の兆しが見られたのである。そこで我々は、養殖時期の大赤潮を防ぐために、緊急避難措置として小規模であっても即時の水門開放を強く要求する。短期開門調査の際、農水省は1週間の準備で開門を実施できたことからすれば、これは技術的にはいつでも可能である。常時全開さらには堤防の開削・撤去のための条件整備工事は、この小規模開門と平行して行うことが可能である。即時の開門によって有明海漁民に希望を与えてほしい。それが農水省と漁民の間の信頼関係を回復させるスタートになる。

以 上


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