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公調委裁定に対する
諫早干潟緊急救済本部・東京事務所の抗議声明

 諫早干潟緊急救済本部、諫早干潟緊急救済東京事務所では、有明海の漁業被害と諫早湾干拓事業の因果関係の認定を求めて漁業者17人が申請していた原因裁定で、公害等調整委員会が8月30日、17人全員の申請を棄却したことについて、裁定の内容を不当とする下記の抗議声明を報道各社と公害等調停委員会に送付しました。

公害等調停委員会のホームページでは「ご意見・ご感想をお聞かせください」として、以下の連絡先を公表しています。今回の裁定に関するみなさまのご意見もぜひ公調委にお送りください。
〒100−0013 東京都千代田区霞ヶ関3−1−1中央合同庁舎第4号館10階
電話:03−3581−9601(代表)Fax:03−3581−9488
e-mail: kouchoi@soumu.go.jp

また、今回の裁定書や委員長談話などはこちら(公調委ホームページ)に公開されています。


公調委・原因裁定棄却決定に対する抗議声明

2005年9月8日

             諫早干潟緊急救済本部    代表:山下八千代
             諫早干潟緊急救済東京事務所 代表:陣内隆之

 公害等調整委員会(以下、公調委)は、去る8月30日、諫早湾干拓事業(以下、諫干)と有明海漁業被害の因果関係の認定を求めた原因裁定で、申請者全員の申し立てを棄却した。しかしこの裁定は、因果関係を明らかにするという原因裁定の趣旨とは裏腹に、科学性・論理性を失った極めて恣意的な内容であり、国との二人三脚による「始めに結論ありき」の政治的な裁定であると言わざるを得ない。私たちは、この不当な裁定を断じて受け入れることはできず、ここに強く抗議する。
 裁定は、客観的データの蓄積や科学的知見が不十分として、「高度の蓋然性」をもって因果関係を認めるには至らないとしているが、公調委が選任した専門委員報告書等からも因果関係は認定できるのに、意図的なデータ無視や現地データおよびシミュレーションのご都合主義的な利用によって、因果関係の認定を放棄してしまった。枚挙に暇がないほど多くの点で恣意的な評価がなされているため、一つ一つ指摘するゆとりはないが、言葉では最高裁判例を踏まえるとしながら、実際には自然科学をもねじ曲げたその無責任な姿勢に憤りを禁じ得ない。

 因果関係はこれまでの調査研究成果からも十分証明できるはずであるが、ここまで高度な証明を漁民側に求めるなら、もはや中長期的に水門を開放して閉め切り前の環境に近づける以外に方法はない。なぜなら、閉め切り前のデータが不足していることが因果関係の証明を困難にしているからである。そしてそれは、委員長からの「積極否認」の要求に答えることができなかった国の責任であるはずだ。しかし、今回の裁定は、中長期開門調査をサボタージュした国を許す結果になっており、著しく不公平かつ不誠実である。もちろん、これで諫干原因説が否定されたわけではなく、なお諫干に強い疑いがあることは事実なので、農水省は、予防原則に照らして工事は即時中断し、中長期開門調査によって因果関係を明らかにする責務があるのは言うまでもない。

 私たちは、「原因は不明、調査中」と言って逃げ回る国に対して、因果関係を明らかにさせようと公調委に裁定を求めた今回の原因裁定事件に期待していた。それは、この委員会が多発する公害紛争に対して公正かつ独立した機関として作られた組織であること、杉並病はじめ近年は多くの事例でいわゆる疫学的判断基準による公正な裁定が行われてきたこと等から、信頼に足ると判断できたからである。結果として申請者側の判断が甘かったと言えばそれまでだが、しかしここまでこの国が腐敗しているとは思いもよらず、ただただ愕然とするばかりである。公調委は、国に対してはその存在意義を示したかもしれないが、国民の信頼は大きく失墜した。委員長は、「今後更なる調査研究が進められて有明海の再生が図られることを念願する」と他人事のような談話を付けているが、紛争解決機関としての役割を放棄した今回の裁定によって、有明海漁民は今後も苦しめられるのである。諫早湾では長年にわたってこの干拓事業に翻弄されてきたが、言い換えれば、公調委もまた有明海見殺しの共犯者となってしまったのだ。

 しかし、私たちはこれで有明海再生を諦めるわけにはいかない。漁民は今後もこの有明海を生活の拠り所にしなければならないからである。そして諫早干潟の復元なくして有明海再生はないからである。私たちは、このような不正義と断固戦い、諫早干潟の復元〜有明海再生を勝ち取る決意である。

以上


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