国営諫早湾干拓事業に関する再質問主意書と回答

六 国際条約関係

1.
 本件事業に係るラムサール事務局に対する日本政府の英文報告書の中で、(1)本件干拓事業によって失われる干潟は、諫早湾に重要な地域(SUBSTANCIALAREA)の内の3分の1に過ぎず、その他の地域には手をつけない、(2)潮受堤防の前面の有明海で捕獲されるムツゴロウの数は増えている、(3)有明海の佐賀県側の既存堤防の前面では、毎年40ヘクタールの干潟の成長があるとの報告がなされている、との報告がそれぞれなされている。これらの報告内容はすべて真実か。また、真実だとすると、これらの報告の根拠となった資料をすべて、それぞれについて明かにされたい。

(答(1)について) 国営諫早湾干拓事業の事業計画において、潮受堤防内部の面積が3550ヘクタールであり、諫早湾全体の約3分の1に相当することを根拠として、諫早湾の相当部分が現状のまま残ることを報告したところである。
(答(2)について) 農林水産省の統計で、平成6年の6トンから、平成7年には13トン、平成8年には19トンと増加していることを根拠として、佐賀県におけるムツゴロウの漁獲量は近年増加していることを報告したところである。
(答(3)について) 農林水産省九州農政局北部九州土地改良調査管理事務所の調査結果を根拠として、佐賀県沿岸では一年当たり約40ヘクタールの干潟の成長がみられることを報告したところである。

2. これまでの政府の答弁によると、本件事業に伴う環境アセスメントに際し、ラムサール条約や世界遺産条約自体、および、これらに関連する環境アセスメントにかかる諸ガイドラインを全く考慮した跡がない。このような政府の政策は、各条約締結国としての責任を放棄したものといえないか。そのようなガイドラインを全く無視してよいという国際法上、ないし国内法上の根拠があればそれを述べよ。

(答) 「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(昭和55年条約第28号)は、具体的にどのような湿地を登録簿に掲げ、又は自然保護区として設定するかの判断を各締約国に委ねており、諫早湾は、同条約の登録簿に掲げられた湿地ではなく、また、同条約に基づき我が国が自然保護区として設定した湿地でもないこと、また、国営諫早湾干拓事業は、着工に先立ち環境影響評価を実施し、事業の実施に当たっては環境に配慮した工法を採用するなど、適正な利用の観点にも配慮したものとなっていることから、我が国が本事業を推進することは、同条約に反するものではない。
 「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(平成4年条約第7号)に関しては、諫早湾は、同条約に基づく世界遺産一覧表には掲載されていないこと、また、同条約上、具体的に、自国の領域内のどのような地域を学術的観点等から顕著な普遍的価値を有するものとするか、及びそのような地域の保護等のためにどのような措置をとるかについての判断は、各締約国に委ねられていることから、国営諫早湾干拓事業を推進することは、同条約に反するものではない。
 なお、本事業に係る環境影響評価は、長崎県環境影響評価事務指導要綱(昭和55年7月1日付け)に基づき、適切に実施したものである。

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